All posts in 山形

庄内「アル・ケッチャーノ」のディナー 9.5点

ずっと行きたかった山形県鶴岡市にあるイタリアン「アル・ケッチァーノ」へ。今年の3月に予定していたのに震災で行けず、「JR東日本パス」で1日1万円でJRが乗り放題だというので、思い切って一緒に行く相手が決まらないまま予約してしまった。今回の旅は、私の場合あと6万食しかない毎日の食事について、「どこで、誰と、何を食べるか」をゆっくり考える良い機会になった。

コースは、3000円台、7000円、1万円の3コースが基本で、素材は惜しみなく使って欲しいけれど量はほどほどの(それでも多い)7000円のコースに。この店はずっと行きたかったので、雑誌「クロワッサン」に掲載されていた奥田シェフのコラム本「田舎町のリストランテ、頑張る」でしっかり予習してきた。この本を読んでいると食材宝庫な庄内はもちろん、日本という四季のある国に誇りを持てる。なんて豊かな国に産まれたんだろう。もしも「アル・ケッチァーノ」に行くことになったらこの本を読んでから気分を高めてから行くことをおすすめします。

私が頼んだコースはドルチェを入れないで全11品。いろいろな食材が楽しめるように一皿の量はとても少ない。それでも11品をゆっくり3時間以上かけて食事をすればお腹はかなりいっぱいになる。

本にもあるんだけれど、この店の料理は庄内浜でワラサがとれない場合をのぞいて必ず「庄内浜のワラサと塩」というメニューから始まる。ワラサは、ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリとなる出生魚で、脂ののった冬の旬に食べるのが一般的だけれど、この夏の時期の比較的淡白なワラサを塩とオリーブオイルだけで食べる。つまり、食材の味が一番わかるシンプルな味付け。塩は「月の雫の塩」というもので、庄内の海が星の力によってちょうどいい具合になった年に数日しかない日の海の塩だそう。庄内の海の香りと、オリーブオイルの青さと新鮮なワラサを口いっぱいに感じる一口です。

最初の一品目で食欲がグッと増して、テンションが上がる、最高の前菜です。

2品目は「庄内浜のオオイヨのセビーチェ」。「塩とオリーブオイルだけ」の料理に少しずつ食材と調味料が加わります。セビーチェとは柑橘系のマリネのこと。出すほんの直前に少しのレモンを加えたもので、塩とオリーブオイルを感じながら、庄内浜で取れた淡白なオオイヨとセロリ、そしてイタリアンパセリを感じる。オオイヨは初めて聞いた魚なのですが、日本海で取れるかなり大型の淡白な白身魚なようです。奥田さんが魚の頭を被っている写真を見せてもらいました(笑)。

3品目は「自家製ヤギのリコッタチーズとフルーツトマトの冷たいカッペリーニ」。枝に付いたままで熟した「樹熟トマト」を使用。ただ甘いだけじゃなく酸味もあり、トマト自身の味が豊か。この豊かさのおかげでバルサミコ酢を使わなくてもカッペリーニのしっかりとした味が出せるとのこと。チーズは自家製のヤギの搾りたてのミルクで作っているからか、驚くほどフレッシュ。こんなにおいしいリコッタチーズは食べたことがない。ここに白い皿なので目を凝らさないとわからないのですが、宮古島の「雪塩」がふってある。カッペリーニ自体はこのままでも十分おいしいんだけれど、このたった一口にも二段階の味が用意されていて、リコッタチーズにこの塩をつけて食べるとまるでカマンベールのような変化を楽しめる。これはちょっと驚きでした。味だけじゃなく、サプライズも重要な食事の要素だよね。

4品目は「吹浦の岩ガキと鳥海モロヘイヤソース」。私が訪れた6月の半ばは岩牡蠣の走りで、途中の新潟の寿司屋でもおいしい岩牡蠣を食べさせてくれた。鳥海山の栄養分が流れ込んだ吹浦の岩牡蠣はぷっくりとしたミルクの部分が濃厚でとても大きいんです。そこに粘りのあるモロヘイヤとセロリとトマトをニンニク風味で。モロヘイヤって家庭で料理したことないけれど、こんな感じのソースなら白身魚のソテーにも合いそうだな。
5品目じゃ「キンカラ鯛と夏イカのズッキーニ」。キンカラ鯛って初めて聞いた。イカは真イカでとても柔らかく、ズッキーニはみずみずしい。
6品目は私がこのコースの中で一番気に入った「庄内浜の赤エビと庄内米“はえぬき”リゾット」。赤エビとは、この地方では甘エビのこと。でも東京でみるよりずっと大きくて立派で2尾でもしっかり主張する甘い身と味噌がたまらない。頭をしゃぶるのが楽しい。バーナーで香ばしくしてあり、山形のはえぬきでリゾットに。はえぬきもリゾットになるんだなー。
7品目は一口で一気にいただく「きゅうりのジェラート」。青臭くてジェラートなんてありえないと思いきや、この青い感じがいい。最近きゅうりが大好き。
8品目は、冒頭で紹介した奥田さんのコラム本の表紙にもなっている「月山筍の生ハム巻きフリット」。月山のそれも標高が1000メートル以上の場所でしかとれない高級食材である月山筍。この幻の月山筍を長い間研究して栽培できるようになったらしい。月山筍の皮と月桂樹の葉を一緒に風味付けに揚げてあるそう。さわやかなえぐみと生ハムの塩気、遅い月山の春を感じられる一品。幸せです。そうそう、この店からの月山の長めはすばらしかった。
9品目は「羽黒の丸山さんの“羊”スペアリブと糸カボチャ」。この丸山さんが育てている羊の肉は今までの羊の肉の概念を超える食感とうまみがたまらないんです。その脂身はいつまでも舐めていたいほど。黄色く見えるのは糸かぼちゃとパイナップル。見ても食べても味が似ているから不思議。
10品目は「サザエとインゲン豆のパスタ“オレキエッテ”」。個人的にはこの前、金沢から送ってもらったサザエが私の人生で一番美味しかったサザエだったんだけれど、これはただつぼ焼きにするわけではなく、オリキエッテと一緒に食べるのがいい。耳たぶ型の生パスタ「オリキエッテ」はサザエのスープをしっかり吸い込んでいる。そこに固くゆでたインゲンの食感。庄内の磯の味を口いっぱいに。
11品目最後は「庄内牛のローストと紅茶のタンニンを入れた人参ピューレ」。最後を飾るのにふさわしい美しく上質のロースト肉、ゆっくりとゆっくりと火を入れたらしく、中まで火は通っているんだけれど柔らかく、脂がちょうどいい感じで舌に当たる。人参のピューレがその味を盛り上げてくれるから不思議。
最後は「本日のドルチェ盛り合わせ」。少しずついろいろな種類を。うまく塩を使ったケーキ類が多く、量が多いコースでもぺろりと食べれてしまう。
イタリアンの食後はエスプレッソってのが流儀で、カプチーノは朝飲むものなんだけれど、私のお世話を心を込めてしてくれた新入社員久保くんが自分ができる料理はカプチーノだというので、カプチーノをいただくことに。彼の自信に満ち溢れているけれど、謙虚で前向きな仕事はきっとたくさんのお客様を幸せにするだろうことよ・・・。
残念ながら奥田さんはお店にいなくて会えなかったので、-0.5点。でも季節毎に庄内の味が食べられるから、初夏じゃない季節にまた来よう。サクラマスだって食べられなかった。前回、震災でいけなかったあとに会社の人がこの店を訪問するというのでサインをもらってきてもらった。その右には、いつか出世すると期待しているカプチーノを入れてくれた久保くんの初サイン。「店を出るまでボクのサイン見ないでください」と言ったときのあの表情、忘れられないな。


関連ランキング:イタリアン | 鶴岡

【東北特集】酒田「味龍」のチャーシューワンタン麺 10点

引越しでパタパタしていたのでほとんど3月のグルメ記録を残していなかったのですが、3月の頭に母と西東北一周一筆書きの旅をしてきました。下の地図がその行程。
東京駅→新潟駅 新幹線MAXとき
新潟駅→酒田駅 きらきらうえつ
酒田駅→秋田駅 特急いなほ
秋田駅→弘前駅 リゾートしらかみ
大鰐温泉駅→青森駅 寝台特急あけぼの
青森駅→八戸駅 特急・・・忘れた
八戸駅→東京駅 なんだっけ・・・新幹線

大きな地図で見る
これがその全切符。
左上の、東京都区内→大宮の乗車券の料金が16,070円って言うのがステキでしょ。これが一筆書きチケットです。途中でとぎれるより安いんだって。
こんなチケット、当然私は買えないわけで、鉄道に詳しい両親がサポートしてくれました。
P1070777
新潟駅では「きらきらうえつ」に乗車。写真の左側のかわいい車両です。特急ではないので特急料金もなく、指定席のみ。窓も大きく作られたいわゆるリゾート列車で、車内販売が変わっていたり、展望席があったりします。
P1070696
実は酒田に向かうのはたったの半年ぶり。雪は残っているものの、笹川流れの風景も穏やか。終点の酒田では酒田ラーメンを食べてきました。前回は「満月」で食べたのですが、今回はdancyuで特集されていた「味龍」へ。駅からタクシーでも20分くらいあるところだったのですが、お客さんでいっぱいでしたよ。地元の人の人気店みたいです。ただdancyu記載の金華豚チャーシューの日は、隔週日曜日しか食べられないみたいです。いつもは三元豚みたいです。
これが「チャーシューワンタン麺」!酒田ラーメンは、魚を使ったスープが基本で、ここも鶏ガラ・豚骨スープと魚介系スープのダブルスープ。すっきりしながらもコクがあり、ずっと飲んでいたいスープ。チャーシューは2種。ほろほろくずれるタイプの肉と、脂身たっぷりの三枚肉部分。脂身が甘くてたまらない。
P1070724
ワンタンはお肉たっぷり。皮はながーくてとろり。肉のうまみもしっかりあって、ワンタンだけでも大満足。麺は縮れ麺。魚介系スープに良く合う。
P1070726
スープだけがうまいわけでもなく、総合的に均整の取れた完成度の高いラーメン。このラーメンなら週一で通いたいくらい。こちらが店主。すごく愛嬌があってかわいらしい人。「dancyuみて東京から来ました!」と話したら、おみやげにチャーシューの端っこをたっぷりくれましたよ。
P1070731
酒田に行った際は、この「味龍」と山居倉庫は必見です。土門拳が好きな人は飯盛公園の土門拳記念館もおすすめ。仏像写真に癒されますよ。
▼この記事がおもしろかった方はクリックしてね。
人気blogランキングへ
山形県酒田市錦町1-2-24
0234-31-3717
11:00〜15:00
水曜定休

【山形特集】酒田「満月」のワンタンメン 8.5点

出羽三山の羽黒山から再び鶴岡駅へ戻り、羽越本線を北上して約30分酒田へ。私にとってほとんどなじみのなかった山形だけれど、酒田と言えば歴史で習った「北前船」で有名な貿易の港として記憶の片隅に残っていました。江戸時代は、最上川から運ばれてきた紅花やお米が西回り航路で大阪へ行き、「西の堺、東の酒田」と呼ばれるくらい栄えたそうだとさ。歴史はこうやって学ぶとすんなり入ってくるね〜。
(もしそれでも酒田にぴんと来ないのであれば、「おしん」が奉公に出た町と言えばぴんと来る?ちなみに父である伊東四朗といかだで別れるシーンは最上川です)
P1070081
北前船時代の名残は街の至る所に見られ、お米の倉庫である「山居倉庫」は未だに現役。写真のケヤキ並木と二重の屋根で湿気のない低温の倉庫を実現できるらしいんです。紅葉の頃だったらもっとキレイだったろうに。
この酒田は、海が近いこともあって魚介系のスープで作る「酒田ラーメン」が有名。タクシーの運転手さん曰く、有名店はいくつかあれど観光客が多く、週末の昼時には行列ができることもあるとか。私も一番の人気店「満月」へ行ってみることに。
店内は座敷もあるかなり広い店で、家族連れからカップルまで幅広い年齢層でにぎわう街のラーメン屋。ラーメンを作るのも普通のおばちゃんで、東京のラーメン戦争なんて何処吹く風?と言った感じ。ゆるくていいよ、ラーメンはやっぱりこうでなくっちゃ。一番人気のワンタンメン650円を注文。
P1070065
これはラーメンなのか?っていうほどの魚介系スープ。そばやうどんと言われても異論ないスープに、中華麺、それにシナチクにチャーシュー、主役のワンタン。脂が浮いたスープだと熱くて猫舌の私はなかなか飲めないんだけれど、ここはそばつゆのようだからか、スープがぬるいからか、最初からぐんぐん飲める。ちょっとしょっぱいのが気になるが、こんなのも悪くないかも。
P1070062
メニューを見ると、予想通りそばやうどんも扱っていた!商店街の八百屋でも思ったけれど、やっぱり物価は安いなぁ。
P1070071
主役のワンタンはヒラヒラした部分が大きくて、肉はほんの一口サイズだけれど、予想以上の数がスープに隠れている。ワンタンは薄くて箸でつかむと確実に切れて、レンゲですくって食べないと無駄なく食べることができない。でもこのふわふわ、ヒラヒラのワンタンも悪くないかも。もし酒田に行くことがあれば、話のネタに酒田ラーメンでもいかがですか?山居倉庫から徒歩10分くらいです。
P1070117
最終日、鶴岡駅から家路につこうと待合所にいると、運良く「きらきらうえつ」がホームに。この「きらきらうえつ」その時にはよくわからなかったものの、あとから父に聞いたりネットで調べたりしたところ、人気のある臨時列車だそう。地酒を飲みながらくつろげる車内と、沿線の観光地と連結した観光案内がウリだとか。新潟から鶴岡までコレに乗れば良かったな。でも、旅は少しくらいやり残しがあった方が良いよね。
話は変わりますが、鶴岡と言うことで東京駅で藤沢周平の「蝉しぐれ」を購入。あまりにもすばらしい作品で未だにすがすがしい気持ちが残っています。主人公の青年が最初の試練を迎えたとき、私は羽黒山行きのバスの中。涙が止まりませんでした。きっとこの本は、自分とそこに生きる人を照らし合わせてしまうんでしょうね。鶴岡は藤沢周平の物語の世界が詰まった場所なんですね。
▼この記事がおもしろかった方はクリックしてね。
人気blogランキングへ
満月
〒998-0855 山形県酒田市東中ノ口町2-1
0234-22-0166
11:00〜16:30

【山形特集】湯田川温泉「珠玉や」の夕飯 8.5点

3連休は山形へ。山形チョイスの理由は、まだ訪れたことがない東北の唯一の県だから。遅い紅葉が見られるかなぁと思っていたら、山形はとっくに冬でした(笑)。
P1060996
山形は、山形新幹線で行く東回りと上越新幹線経由で行く西回り、それに飛行機で行く3つのパターンが一般的。私は先日訪れたばかりの新潟経由の西回りを選択。MAXときと言う二階建ての新幹線は、東京駅の次がなんと新潟でした。1時間40分ほどで着けるなんて速い!そこから、羽越本線「特急いなほ」に乗り換え、日本海の海岸線を走って2時間半、鶴岡に到着します。途中、村上を越えた辺りは「笹川流れ」と呼ばれる美しい海岸景勝地で、荒れ狂う日本海の厳しい海が作り出す奇岩や白い波がとってもきれい・・・だが、あまりにも強い風と波で圧倒されてしまいました。
P1060999
鶴岡のある庄内平野は、鶴が飛来することでも有名で、左右に広がる田園風景には大きな鶴の群れが至る所に見られました。この機会に山形をたくさん勉強しているな・・・、旅ってこういうのが楽しいよね。
今回訪れたのは、鶴岡からバスで30分ほどの湯田川温泉。旅館が10軒ちょっとの小さな温泉街なのですが、贅沢なかけ流しの温泉。山形にはたくさん美味しい物があるので期待もふくらみます。泊まった宿は久衛兵旅館別館の「珠玉や」。比較的リーズナブルに泊まれて、美味しい料理と温泉にどっぷり浸かれる。その中で美味しかったメニューをいくつか紹介します。
P1070005
「山形牛のしゃぶしゃぶ」。赤身中心の肉がうまい。
P1070013
二晩とも夕食に出てきた「なすそうめん」。米なすに片栗粉をつけてゆでてから冷まし、冷たい出汁に浮かべたもの。今度うちでも作ってみよう。
P1070015
「鰤大根」。ゼラチン質の皮のまわりがうまい。
P1070020
「いくらご飯」。新米がうまい!山形だから「はえぬき」かなぁ。もしかしたらお米が一番うまかったかもしれないなぁ。
P1070095
「羽黒豚のしゃぶしゃぶ」など。あとここで出てきた漬け物はみんなうまかった。
P1070101
「口細カレイの焼き物」「蓮根・舞茸などの挟み揚げ」。新潟で食べた柳カレイの寿司はうまかったけれど、このカレイもなかなかうまい。
P1070037
二日目は、出羽三山で有名な「羽黒山」へ。ふもとの羽黒センターまで鶴岡駅からバスで約40分。雪がどんどん深くなり、バス通りの両脇の家並みのほとんどが窓にトタンを貼り付け、冬対策をしている。庄内平野は雪よりも風対策が必要らしい。この写真は、ふもとから階段で300段ほどのところにある「五重塔」。大木ばかりの森にあるこの白く輝く木造建築は、私でも何となく霊山であることを感じさせる。山伏出てきそうだし。頂上までの階段は2400段ほどで、そりゃ楽じゃないけれど小一時間ほどでつく距離なのですが、足下は雪ですべり息を抜けない状態。着く頃には汗でぐっしょりでした。
行くなら夏だね。
▼この記事がおもしろかった方はクリックしてね。
人気blogランキングへ
湯田川温泉「珠玉や」
山形県鶴岡市湯田川乙39
TEL.0235-35-3535
全館禁煙です。