Archive for 7月, 2011

【バスクへの旅その1】日本からバスクに乗り込んだよ!

今年の夏休みは、かねてから行きたかったバスク地方へ。バスク地方はスペインとフランスにまたがる四国程度の大きさの7つの県をもつ地方で、バスク語を話すバスク人が住む文化的にまわりの地とは独立している地方だ。特にスペインにある三星レストランのうち3件がこのバスク地方に密集している美食地帯。国内一のバル街があり、今私がいるサン・セバスティアンだけで100件以上のバルが旧市街に密集している。

このバスクの地に日本からスムーズに乗り込む交通手段にはちょっと苦戦した。今現在、スペインに行ける直行便はない。バスクに行くには、ビルバオ空港、サン・セバスティアン空港、ビアリッツ空港、パリから鉄道と選択肢はあるんだけれど、日本からヨーロッパの主要都市に降り立ち、それらの空港にスムーズに乗り継げる便があんまりないんだ。特にサン・セバスティアン空港はスペイン国内からの便しかないし、ビアリッツ空港へのパリからの乗り継ぎはあまりにも待ち時間が多い。パリで一泊し、TGVでフランス側のバスクからボルドーを経由してスペイン側のバスクへ行く方法もあったけれど、今回は、ルフトハンザ航空でフランクフルトに入り、ビアリッツ空港に行くプランを取った。ここまでの結論にいたるまでに、1ヶ月くらいかかったよ。震災前の話です。

ラッキーなことに、フランクフルト行きの便はA380!日本ではまだシンガポール航空とルフトハンザ航空でしか乗ることができない。ルフトハンザ航空でも15機注文してまだ8機しか納品されていないそうだ。二階建てでエコノミーの席のピッチもかなり広く、包みこむようなシートは疲れない。ヨーロッパ行きの飛行機でここまで疲れがなく乗れたことは初めてかもしれない。この機体は乗る価値アリ。みんなちゃんとこの機体の素晴らしさを理解して乗っているのかなぁ。

20110710-063740.jpg

機内での食事は3回。朝の9:30の便で11時間程度のフライトで到着は15:30。時差はあるけれど、昼間が長ーい感じ。出発してから2時間程度で3食のうち一番豪華な昼食に。牛肉の柳川丼など、和食を選択。味付けは甘くて濃いけれど、とってもまとも。

20110710-063755.jpg

一緒に行ったやまぴーは、面白半分で乳製品有りのベジタリアン食を事前に注文。野菜カレーは結構いける。そうそう、ルフトハンザカラーの食器がどれもすてき。もって帰りたかったよ。

20110710-063808.jpg

私の夕飯はチキンを甘く煮込んだものに煮しめを添えて。これもまとも。

20110710-063827.jpg

こちらはベジタリアン食。肉の代わりに厚揚を使った煮込みときし麺のようなもの。

20110710-063841.jpg

突き抜けるような青い空と共にフランクフルト到着。空が日本じゃない、ヨーロッパ。そしてあたりまえだけどルフトハンザの機体だらけ〜。入国審査はここですませ、トランジット。その間に買い物できるエリアは広く楽しいー。やまぴーはリモワとルフトハンザのコラボショップに夢中。限定のルフトハンザカラーのイエローの旅行カバンがめちゃくちゃほしくなっていた。あのカラーリングは日本ではほとんどみないし、値段も日本で買うより安いから買いだと思うなー。

20110710-063900.jpg

フランクフルトからビルバオまでの便では日本人がひとりもいなかった。身長2メートルはある高校生のバスケットボール選手に右と後ろを囲まれ、むさくるしく圧迫感のある2時間を過ごしてあっというまにビルバオに。ビルバオ空港はとっても小さく、閑散としている。そうそう、バッゲージレーンはEUとEU以外で分かれているから注意。なかなか荷物が出てこないなぁと思ったらレーンが違ったよ。

ビルバオ空港からサン・セバスティアンまでは100キロほどあり、75分かかる高速バスが出ている。14.78ユーロ。この時期は1時間間隔で毎時45分に出発し、サン・セバスティアン新市街のAmara Plaza前の高速バス乗り場に着く。結構遅くまで出ているから便利。タクシーだと100キロはあるのでかなりの金額になりそう。高速バスは広くてゆったり快適。車窓はまさに山バスクで、放牧されている牛や羊、ろば、ぶどう畑、なんだかすごい奇岩の山々が見えて全然飽きない。サン・セバスティアンという街の名前は、バスク語である「Donostia」と記載されていることがあるのでバスに乗ったりするときは要注意。

20110710-063924.jpg

サン・セバスティアンと言えば、小さな街なのに100件ものバルがひしめく美食の街!2キロほど離れた旧市街までバスで移動する。Amara Plazaからは旧市街へ向かうバスは頻繁に出ていて、ひとり1.4ユーロだった。その場で運転手に現金払いできる。旧市街に入ると急に人が増えて街がにぎやかになるのですぐわかるかも。

さてさて、旅の途中にどれだけ記事がかけるかわからないけれど、次はバル巡りについて書きたいと思います。Hasta la manana!

庄内「アル・ケッチャーノ」のディナー 9.5点

ずっと行きたかった山形県鶴岡市にあるイタリアン「アル・ケッチァーノ」へ。今年の3月に予定していたのに震災で行けず、「JR東日本パス」で1日1万円でJRが乗り放題だというので、思い切って一緒に行く相手が決まらないまま予約してしまった。今回の旅は、私の場合あと6万食しかない毎日の食事について、「どこで、誰と、何を食べるか」をゆっくり考える良い機会になった。

コースは、3000円台、7000円、1万円の3コースが基本で、素材は惜しみなく使って欲しいけれど量はほどほどの(それでも多い)7000円のコースに。この店はずっと行きたかったので、雑誌「クロワッサン」に掲載されていた奥田シェフのコラム本「田舎町のリストランテ、頑張る」でしっかり予習してきた。この本を読んでいると食材宝庫な庄内はもちろん、日本という四季のある国に誇りを持てる。なんて豊かな国に産まれたんだろう。もしも「アル・ケッチァーノ」に行くことになったらこの本を読んでから気分を高めてから行くことをおすすめします。

私が頼んだコースはドルチェを入れないで全11品。いろいろな食材が楽しめるように一皿の量はとても少ない。それでも11品をゆっくり3時間以上かけて食事をすればお腹はかなりいっぱいになる。

本にもあるんだけれど、この店の料理は庄内浜でワラサがとれない場合をのぞいて必ず「庄内浜のワラサと塩」というメニューから始まる。ワラサは、ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリとなる出生魚で、脂ののった冬の旬に食べるのが一般的だけれど、この夏の時期の比較的淡白なワラサを塩とオリーブオイルだけで食べる。つまり、食材の味が一番わかるシンプルな味付け。塩は「月の雫の塩」というもので、庄内の海が星の力によってちょうどいい具合になった年に数日しかない日の海の塩だそう。庄内の海の香りと、オリーブオイルの青さと新鮮なワラサを口いっぱいに感じる一口です。

最初の一品目で食欲がグッと増して、テンションが上がる、最高の前菜です。

2品目は「庄内浜のオオイヨのセビーチェ」。「塩とオリーブオイルだけ」の料理に少しずつ食材と調味料が加わります。セビーチェとは柑橘系のマリネのこと。出すほんの直前に少しのレモンを加えたもので、塩とオリーブオイルを感じながら、庄内浜で取れた淡白なオオイヨとセロリ、そしてイタリアンパセリを感じる。オオイヨは初めて聞いた魚なのですが、日本海で取れるかなり大型の淡白な白身魚なようです。奥田さんが魚の頭を被っている写真を見せてもらいました(笑)。

3品目は「自家製ヤギのリコッタチーズとフルーツトマトの冷たいカッペリーニ」。枝に付いたままで熟した「樹熟トマト」を使用。ただ甘いだけじゃなく酸味もあり、トマト自身の味が豊か。この豊かさのおかげでバルサミコ酢を使わなくてもカッペリーニのしっかりとした味が出せるとのこと。チーズは自家製のヤギの搾りたてのミルクで作っているからか、驚くほどフレッシュ。こんなにおいしいリコッタチーズは食べたことがない。ここに白い皿なので目を凝らさないとわからないのですが、宮古島の「雪塩」がふってある。カッペリーニ自体はこのままでも十分おいしいんだけれど、このたった一口にも二段階の味が用意されていて、リコッタチーズにこの塩をつけて食べるとまるでカマンベールのような変化を楽しめる。これはちょっと驚きでした。味だけじゃなく、サプライズも重要な食事の要素だよね。

4品目は「吹浦の岩ガキと鳥海モロヘイヤソース」。私が訪れた6月の半ばは岩牡蠣の走りで、途中の新潟の寿司屋でもおいしい岩牡蠣を食べさせてくれた。鳥海山の栄養分が流れ込んだ吹浦の岩牡蠣はぷっくりとしたミルクの部分が濃厚でとても大きいんです。そこに粘りのあるモロヘイヤとセロリとトマトをニンニク風味で。モロヘイヤって家庭で料理したことないけれど、こんな感じのソースなら白身魚のソテーにも合いそうだな。
5品目じゃ「キンカラ鯛と夏イカのズッキーニ」。キンカラ鯛って初めて聞いた。イカは真イカでとても柔らかく、ズッキーニはみずみずしい。
6品目は私がこのコースの中で一番気に入った「庄内浜の赤エビと庄内米“はえぬき”リゾット」。赤エビとは、この地方では甘エビのこと。でも東京でみるよりずっと大きくて立派で2尾でもしっかり主張する甘い身と味噌がたまらない。頭をしゃぶるのが楽しい。バーナーで香ばしくしてあり、山形のはえぬきでリゾットに。はえぬきもリゾットになるんだなー。
7品目は一口で一気にいただく「きゅうりのジェラート」。青臭くてジェラートなんてありえないと思いきや、この青い感じがいい。最近きゅうりが大好き。
8品目は、冒頭で紹介した奥田さんのコラム本の表紙にもなっている「月山筍の生ハム巻きフリット」。月山のそれも標高が1000メートル以上の場所でしかとれない高級食材である月山筍。この幻の月山筍を長い間研究して栽培できるようになったらしい。月山筍の皮と月桂樹の葉を一緒に風味付けに揚げてあるそう。さわやかなえぐみと生ハムの塩気、遅い月山の春を感じられる一品。幸せです。そうそう、この店からの月山の長めはすばらしかった。
9品目は「羽黒の丸山さんの“羊”スペアリブと糸カボチャ」。この丸山さんが育てている羊の肉は今までの羊の肉の概念を超える食感とうまみがたまらないんです。その脂身はいつまでも舐めていたいほど。黄色く見えるのは糸かぼちゃとパイナップル。見ても食べても味が似ているから不思議。
10品目は「サザエとインゲン豆のパスタ“オレキエッテ”」。個人的にはこの前、金沢から送ってもらったサザエが私の人生で一番美味しかったサザエだったんだけれど、これはただつぼ焼きにするわけではなく、オリキエッテと一緒に食べるのがいい。耳たぶ型の生パスタ「オリキエッテ」はサザエのスープをしっかり吸い込んでいる。そこに固くゆでたインゲンの食感。庄内の磯の味を口いっぱいに。
11品目最後は「庄内牛のローストと紅茶のタンニンを入れた人参ピューレ」。最後を飾るのにふさわしい美しく上質のロースト肉、ゆっくりとゆっくりと火を入れたらしく、中まで火は通っているんだけれど柔らかく、脂がちょうどいい感じで舌に当たる。人参のピューレがその味を盛り上げてくれるから不思議。
最後は「本日のドルチェ盛り合わせ」。少しずついろいろな種類を。うまく塩を使ったケーキ類が多く、量が多いコースでもぺろりと食べれてしまう。
イタリアンの食後はエスプレッソってのが流儀で、カプチーノは朝飲むものなんだけれど、私のお世話を心を込めてしてくれた新入社員久保くんが自分ができる料理はカプチーノだというので、カプチーノをいただくことに。彼の自信に満ち溢れているけれど、謙虚で前向きな仕事はきっとたくさんのお客様を幸せにするだろうことよ・・・。
残念ながら奥田さんはお店にいなくて会えなかったので、-0.5点。でも季節毎に庄内の味が食べられるから、初夏じゃない季節にまた来よう。サクラマスだって食べられなかった。前回、震災でいけなかったあとに会社の人がこの店を訪問するというのでサインをもらってきてもらった。その右には、いつか出世すると期待しているカプチーノを入れてくれた久保くんの初サイン。「店を出るまでボクのサイン見ないでください」と言ったときのあの表情、忘れられないな。


関連ランキング:イタリアン | 鶴岡