京都花背の名旅館「美山荘」の中東さんプロデュースの店が銀座にできたというので来訪。「美山荘」には一度は行ってみたいと思っているあこがれの旅館、そしてご兄弟の中東さんが銀閣寺前でやっている「草喰なかひがし」は、ここ数年訪れていないけれど、この店のために京都に通っていたくらい大好きな店です。
この「石楠花」は銀座三越新館の12Fでデパートの上ということもあってさほど高くない。今回は一番安いコース「すみれ」5800円に。まずは一献は「蕗の白和え」。早春の蕗の香り、こんにゃくの食感、椎茸の旨み。そこに京都の日本酒をひとくち。食欲が促進されるひとくちめ。
椀は堀川牛蒡の葛寄せ。上には芽甘草。器もなかなかステキ。上品な白味噌に堀川牛蒡を丁寧におろして葛で寄せて揚げたもの。
向付けは、本マグロと浅ネギ、ウド、そこに辛子味噌、上にはノビル。春を感じさせる野菜たちをうまく使っている。外は寒くても料理はすっかり春です。
八寸は、ウルイと浜防風の和えた物(ガラスの器)、稲荷寿司、鰯の鈍刀煮、砧巻きに柚子味噌、中央の新芽のようなものは福岡の蕾菜、白魚の天ぷら。蕾菜は初めて食べたのですが、春の山菜のようなエグ味はまったくなく食べやすい甘い新芽。今度八百屋で見つけたら買ってみよう。大好きなウルイはほんの少しでもシャクシャクとした食感、春のうまみ、十分感じられました。浜防風ってどんな野菜かなと思って調べたら、たまーにデパートに置いてありますね。これも今度買ってみよう。
焼き物は、鰆の吟醸焼き、海老芋の蒸し焼き、葉山葵。海老芋ってなんておいしいんでしょう。ほっこりねっとりしていて、これひとつでグラタンのような調理されたような完成された味。質のよい京野菜が手に入る機会があったら、私もこんなふうに蒸し焼きにしてみよう。
炊合せは、金目鯛の上に淡い雪のように蕪を落とし、菜の花、わらび、柚子胡椒を添え、餡を添えた物。金目鯛は普通、もう少し皮をパリっとさせて欲しかったな。蕪は何か物足りなかったなぁ。餡の薄さは丁度良かった。
食事は、魚沼産のお米に漬物、蕗味噌。ごはんはひと粒ひと粒が立っていて、炊き方には相当のこだわりを持っていることがわかる。「なかひがし」では煮え端のご飯を出したり、極上のメザシが出たりと、最後のご飯に対するこだわりはかなりあったが、ここはまだまだ。でもごはんはうまかった。
ご飯と一緒に出てきたほうじ茶の器には「高山寺」と書かれていて、鳥獣人物戯画の一幕が書かれていて、私の器は蛙と兎が相撲をとっている。ウィキペディアで調べてその場でわかったのだけれど、こういう説明、お店の人がちゃんとしてほしいなぁ。聞いてもあっさり答えて、そこに突っ込んで話題を提供することもない。
お菓子は金時人参のカステラ。
外はかなり広い席があり、季節がよければ食事もできそう。東京タワーがちょうど見えていいかんじ。
料理は5800円だと思えばまあまあだけれど、美山荘の名を語るのであればなってない。特にサービス、女将はトイレの場所を聞いてもさっさと答えて私がよくわからず聞き直す頃にはそこにいないし、他の店員も含めて空気を読む感覚が普通の懐石レベル。余裕が感じられない。東京の慌ただしいデパート上の懐石料理屋の粋をまったく出ていない。京都の素材を使ったお店の雰囲気はなかなか良い手頃な懐石がいただける店としてはいいと思うけれど、中東さんプロデュースと思って期待していくとがっかりする。厳しい意見なんだけれど、でもこの安さと居心地の良さならまた行ってもいいかな。今回はちゃんと予約して行ったけれど、予約せずにふらりとはいれそうなので、銀座では重宝するかも。そもそも銀座三越新館の12Fが全体的に空いているんだけれど大丈夫だろうか・・・。