【京都特集】「草喰なかひがし」の秋の夜メニュー 10点


この店は私が日本全国の中で一番好きな店。味も価格も内装も対応も満点。その上、味覚でも盛りつけでも四季を感じられ、この店にいると丹沢の麓で育った子供の頃のことをよく思い出します。友達の家で「あけび」をもらって食べたなとか、庭の「いちじく」がカミキリムシに枝を折られちゃったなとか、夕飯時になると母親に「みょうが」を取ってくるように言われたなとか。そんな特別な店です。今回は全品の写真を載せることができました!これもメニューについて何度も質問する私にちゃんと教えてくれた中東さんのおかげです。
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ではさっそく「八寸」から。下に敷いてあるのは、緑の葉はゼンマイ、奥の黄色の葉は柿。これが山菜のゼンマイはすぐにわかるけれど、大きくなったゼンマイはこんななんだ〜。この翌々日のこと、兵庫の城崎温泉から見える展望台までの山道で探してみると、至る所に生えてました(蛇に遭遇してドキドキでしたが・・・)。こんな風に飾るとステキですね。
奥のガラスの器は、白イチジクと生の小豆のゆでた物をきなこ酢で和えたもの。上に載っているのは種紫蘇の花。その右はモロッコインゲンに牛乳を乾燥させた“醍醐”という粉をかけたもの。その下はミョウガのお寿司。インゲンの上の黒い物はコウタケの揚げたもの。その手前は栗の揚げた物と押し銀杏、衣かつぎ。手前は木の葉カレイ。小さくてもちゃんとカレイしています。真ん中のほおずきに見立てたものは、鶏の初卵の味噌漬け、その下は蕪に三年味噌を挟んだもの。その奥は鰹の生利節に山椒の葉の佃煮を添えたもの。秋がいっぱいです。
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続いてお椀は、白味噌のスープ。具はズイキの芋と茎、それに上に載っている葉が芥子菜。初夏に訪れたときの具は春菊でした。今回の白味噌はいつもよりも赤っぽかったです。甘い白味噌は大好き。この店で白味噌のおいしさに魅せられてから、私の作るみそ汁は白味噌との合わせ味噌になりました。
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子持ち鮎を笹で包んで。初夏の鮎は頭からかじられたけれど、秋の鮎は頭と骨がきれいに抜いてありました。笹の香りが鮎にしみて薫製に。出されたときはきれいに藁で包んであったんですよ。添えてあるものは焼いたオクラとレンコンの揚げたもの、万願寺唐辛子の赤くなったものをぷるぷるに固めたもの。ハバネロをお酒で薄めたソースにつけていただきます。ハバネロはほんのちょっとだからそんなには辛くないけれど、後味がピリッと来ます。
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鯉の洗い。鯉って好きでも嫌いでもなかったけれど、こんなに美味しい魚なんだと気づかせてくれたのがこの店の鯉料理。川魚にあるような泥臭さは一切ないです。今時期の山椒の実と葉と一緒に。山椒の実は、中の種こそ小粒でぴりりと辛いが、まわりのオレンジの部分は柑橘系。さわやかな酸っぱさ。左は鯉の皮。奥がにんじんの間引き菜。手前がミニトマト、四角豆、ニガウリ。間引き菜は、中東さんの本にも書かれているのですが、畑で野菜が生長するときに間隔を空けるために間引いたもの。だからにんじんの葉も柔らかくてやさしい味がする。さっそく私もベランダで育てている二十日大根の間引き菜をうどんに載せてみたら、ちゃんと辛い大根の味がしたからびっくり。これは食べられるとか、ここは食べないとか、そういう固定観念を取り除かないとおいしいものを食べ逃している気がします。
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ぐじ(赤甘鯛)をとんぶりで和えたもの。上に載っているのはオクラの花。下に見えるのは生姜のシャーベット。ぐじは京料理で高級食材として重宝される魚で、若狭湾でとれる赤甘鯛のこと。脂がのっていて淡泊で、焼き魚にするとふわふわで甘くてとてもおいしいんです。錦市場で干物が買えますよ。20センチくらいの大きさで1枚1000円くらい。
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土瓶蒸し。松茸と蕪、蕪の葉、イワナ。スダチではなく、柚子で。
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中はこんな感じ。大きな松茸がゴロゴロ。この濃厚な極上スープ、ちょっと言い表せないうまみがいっぱいです。
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アケビの実と皮、栗、白味噌の和え物。お口直しにとのこと。アケビって皮も食べるんですね。
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海でとれたウナギの白焼きに赤タマネギ、ミョウガを載せて。かかっている黒っぽいものは醤油を乾燥させてもの。写真にはないが、水茄子のおつけものが添えられていました。
ここでおくどさんで炊いた煮えばなのご飯をほんの一口いただく。まだお米がつやつやでほんのちょっとだけ芯がある。お米のいい香り。
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アワビ茸のおひたし。上に載っているのは芥子菜。
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蓮根もちに、舞茸、クロカワダケのあんかけ。
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ミョウガ、祇園豆、ミョウガの花の白和え。祇園豆は祇園祭の時期に食べるからそう呼ばれているらしい。
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松茸ご飯。といっても、松茸を入れて炊いているのではなく、松茸を炭火で軽く炙り、ご飯の間に挟んでいる。柚子と松茸のいい香り。ご飯に炊き込まないから、香りだけでなく松茸自体の食感もしっかりと残っている。ぱらぱらと振りかけた塩がちょうど良い。
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この店のメインディッシュは、めざしと白いご飯、そして漬け物。もうお腹がぱんぱんだけれど、このめざしと白いご飯だけは絶対にたべなくちゃいけない。
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デザートはオレンジのゼリーにバジルのシャーベットを添えたもの、右の赤いものが山帽子、手前がほおずきトマト、ぶどう。ゆるゆるのオレンジのゼリーにバジル100%のシャーベットがどんどん溶けていく。目をつぶってもオレンジとバジルの香りでいっぱいに。
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この店で食事をするのは私にとってワールドカップを生で観戦するくらい待ちに待ったイベント。この店を紹介した書籍「草を喰(は)む」でも書かれているが、「一幕の舞台を見る思い」がするんです。店はカウンター12席と2階のテーブル1席のみ。カウンターの中の厨房は端から端までよく見えて、中東さんと女将さん、その他スタッフの息づかいまで聞こえてきます。いろりで焼き始めたオクラはどうするんだろう、おくどさんのお釜がふつふつと煮えてきたな、八寸をきれいに盛りつけるなぁ・・・なんて思いながらでずっと見つめていると、約3時間の食事もあっという間なんです。夕食は18時からなのですが、18時ちょうどにいくのがおすすめ。最初にメニューを説明されるのと、となりの誰かが食べているのを除いてしまってから説明されるのでは、料理が出てくるときの楽しみが違いますから。
コースは一番高いものでも14000円。京都の名高い料亭の値段を考えれば半分以下。でも予約が取れなくちゃお金があっても行けないですよね。初めて行かれる方は毎月1日の朝から翌月分の予約をすることができますが、その時にはすでに一度訪れた人の予約が入っているから、希望の日程はなかなかとれないかもしれないです。そんな風に聞くと敷居が高いように聞こえますが、実際にお店に訪れると「ようこそ、はじめました。なかなか電話がつながらずに申し訳ございませんでした」と店主と女将さんが頭を下げてきます。ぜひ予約をして、予約に合わせた京都旅行を計画してみてはいかがですか?もう一歩踏み込んだ京都に出会えますよ。
2005年12月に訪れたときの記事はこちら
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草喰なかひがし
京都府京都市左京区浄土寺石橋町32-3
075-752-3500


2 Comments on "【京都特集】「草喰なかひがし」の秋の夜メニュー 10点"

  1. tenbears より:

    さすが10点!
    写真(というか料理の)数もすごいっすね。
    京都は今年の2月に行って味をしめたので、また行く機会を作ったら、1日の予約を忘れないようにします。

  2. Pochi より:

    この店に行くと京都がもっと好きになりますよ。
    京都に行くときは声をかけてください!

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