長らく体調が振るわず休職していたのですが、夏を前にやっとこさ復帰できました。その復帰を自ら祝ってずっと行きたかった青森県津軽半島突端の三厩(みんまや)に寿司を食べに行って来ましたよ。
向かうはもちろん「はやぶさ」で。乗り心地もよく、新青森駅まではすいすいと行ってしまいます。新青森駅にたまたまE5系がふたつも止まってましたよ。かっこいい!、鼻が長い!
新青森駅からは津軽線で蟹田駅、たった一両の車両に乗り換えて三厩駅まで向かいます。このたった一両の車両がのんびりなの。日に三厩までは5往復しかしていないし、お客さんは11人しか乗っていない。自分でスイッチを入れる扇風機がいいんだよねー。
こんな落書きがあったりね。
三厩駅からは100円の循環バスが龍飛岬まで往復していて、ここで降りた人のほとんどは三厩の集落を通りすぎて竜飛岬まで行ってしまうようです。私たちはこの町にはもうひとつしかない「龍飛旅館」に宿泊。目の前の中浜海岸はとてもきれいで散歩やテントを張る地元の人しか見当たらない。かもめの数のほうが100倍は多いよ。北にはすぐそこに北海道が見えます。
港の船にはイカを釣るための大きなライトや豊漁を願う旗がなびいていて情緒あります。この旗、調べたら山形県鶴岡市の龍澤寺という漁業関係者がお参りするお寺らしい。
これは海底に沈める魚のマンションとのこと。なんともかっこいいぞ。
梅雨の雨がしとしとと降る早朝。カラスだって寒そう。
さてさて、秀鮨について。もとい三厩について。
大間のマグロって聞きますよね。ブランド化して高騰しています。でもマグロは津軽海峡で泳いでいるので、他の港に上がっても同じマグロです。この三厩(みんまや)は、下北半島の反対側、津軽半島の突端にある小さな漁村で、三厩のマグロが驚くほど安く食べられる上に、心あたたまる、寿司屋なのにまるでスナックに来たような(笑)おもてなしを受けることができます。町にはこの店しか寿司屋はありません。
メニューはセットで選ばず、おまかせで海の幸、山の幸を出してもらいました。量は食べられないので少しずついろいろなものを、そして最後にはマグロの握りでしめたいとだけお願いしています。
青森の幻のお酒「田酒」も山ほど飲み(となりの常連さんごちそうさまです)、結果的にひとりあたりの料金はあまりにも安くて申し訳なく思うくらいです。
突き出しは、漬物、ネマガリダケとひじきの煮物。
つまみ第一弾は、マグロの刺身。赤身ともう少し脂の乗った部分、そして中トロ。口の上でまるでシルクのような感覚。あまりにもおいしくて最初から言葉を失います。
続いて、心臓部分二種。馬肉のような味でにんにく醤油でいただきます。心臓上部のポンプ部分はコリコリとした歯ごたえ。こんな珍しい部位が食べられるのも一本で買っているからこそです。
水槽から取り出したばかりのアワビとツブ貝。アワビ、コリコリとしていて旨味も強くなんてうまいのかしら。
山の幸より、ギョウジャニンニクの醤油漬け。三厩は海を目の前にしながら、山が真後ろにあり、海の幸も豊富なんです。食生活が豊かなんですね。でもスーパーや病院は少なく、車で青森市街までまとめて買い出しに行くそうです。
こちらはネマガリダケ。こちらの人にとってたけのこといえば夏のネマガリダケだと食彩の王国で言っていたな。やわらかくてポキポキとうまいのです。
イカ刺し。漁村にはたくさんのイカ釣り漁船がとまっていました。新鮮でうまい。子持ちヤリイカの焼きは、子持ちの部分がまるで米粒のようで、まわりは香ばしくてカリッとしてながらも、子持ちの部分がねっとりしていてすごくうまい。マグロの胃袋は甘辛く佃煮で。酒の肴にびったり。ツブ貝は壷焼きで。ツブ貝は生より焼いたほうが好きだなぁ。
夏の短い期間が旬のキタムラサキウニは目の前の海で取れるそう。その場で割ってもらってスプーンですくうと身は小さいながらも海の塩辛さとウニの甘み、新鮮だからすぐに口では溶けません。贅沢すぎます。
その場で割ったものではないウニも、ミョウバンを使っていないので不自然な味がしません。こんなにうまいウニはひっっっさしぶりです。かきこんで食べたかった。ウニをたくさん食べたい人は電話で事前に言ってほしいとのことでした。次回夏に行くときはきちんと連絡しよう。
子持ちヤリイカの一夜干し。丸かじりするとやわらかくて、中からぷちぷちと卵がはじけてすごくすごくうまい。
マグロの胃袋の佃煮。
ツブ貝の壷焼き。
最後に握りはマグロ三種と巻物、それにウニの軍艦。大トロは脂が安っぽくなくなんとも言えず幸せな溶け心地、口の中で酢飯と相まって最高の最高の時間を提供してくれます。あまりにも美味しすぎて次の日の予定を変更して(弘前に戻って岩木山に登ろうかと思っていた)昼も食べに来てしまいました。こんなにうまいマグロはたべたことないかも。いや、あるのかもしれないけれど、1万円以上は払うような寿司屋で出会った記憶しかありません。このマグロは酢飯と一緒に食べた方がうまいような気がするな。三厩最高!
おみやげで巻いてもらいました。おやつにぺろりといただきました。
この店は、もちろん安くてうまいマグロや地魚や山菜が食べられることはもちろんなのですが、ここのご夫婦のホスピタリティがすばらしいんです。おいしいものを食べてほしい、三厩のいいところを知ってほしいという気持ちがあふれ、時間が許す限りあらゆる方法でプレゼンしてくれます。例えば、今まで採れたマグロや山菜の写真を目の前にあるテレビにパソコンから写真を映しだして見せてくれたり、自作のマグロの絵はがきやマグネット、アワビで作った携帯ストラップをプレゼントしてくれます。私はなぜかネット通販で買ったターコイズのピアスをもらいました(なぜ?)。さらに次の日に観光にも案内してくれました。そして、一緒に飲んでくれた地元の方々、ホントに楽しいひと時をありがとうございました。田酒うまかったです。あまりにも田酒がうまくて、田酒の前掛けを新青森駅で買ってしまいました。
三厩はちょっと不便です。とは言っても、はやぶさが開通して便利にはなったと思います。東京から9:36のはやぶさに乗っても三厩着は15:00です。津軽線の三厩駅は津軽半島の終着駅。一日に5本しか走っていませんが、駅前の100円循環バスで町まで行ってくれます。宿は龍飛旅館一件しかありませんが、秀鮨から送り迎えしてくれます。目の前の中浜の海岸は南国みたいなキレイな海岸(多分そんなふうに見えるのは夏だけ)だし、高台にある義経寺まで登れば湾全体が一望できます。義経寺ではアオゲラの群れに会えました。バスで龍飛崎まで行けば、津軽海峡冬景色の碑と石川さゆりの歌声(龍飛崎が出てくる二番)が大音量で聞けますよ。珍百景で有名な階段国道も笑えます。
新幹線が函館まで伸び、さらに三厩まで便利になった暁には、この三厩マグロと秀鮨のホスピタリティは今よりもっと流行っちゃうんじゃないかと思います。みんなに知ってほしいという気持ちでこの記事を書きながらも、変わらず地元に愛される今のままの秀鮨であってほしいと思うばかりです。また遠くないうちに遊びに行きますので、三厩の皆さん、また遊んでください。
最後に龍飛岬にて、マグロを担いできたぜ!気分はハトヤw
秀鮨
青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩新町35
0174-37-2856